「依存タイプ」敦子の物語

「依存タイプ」敦子の物語

【呪いの仮面】…かわいそうな人「敦子」

 

「ごめん。最近仕事が忙しくて」

 

浩一は電話の向こうですまなそうに謝っている。

 

「うん。わかった」

 

敦子はそう言ったものの、激しく心が乱れ、イライラを抑えるのが精一杯だった。

 

何せ、浩一のデートのキャンセルは二回連続なのだ。

 

(敦子、怒ってるみたいだな……。何だか次は電話しづらいな……)

 

敦子は気性が激しく、それが原因でよく浩一とケンカになる。

 

今回の件は、よく我慢したと自分をほめてあげたいぐらいだ。

 

その努力が浩一にわかってもらえないのが悔しい。

 

半月後

 

「敦子。今度の週末、少し休めそうなんだ。疲れてるからあんまりいろいろできないと思うけど、会ってくれないかな?」

 

「うん。わかった……」

 

敦子はそう答えるのが精一杯だった。

 

本当は、今まであまり会ってくれなかったことに対する不満が噴出しそうなのだ。

 

(敦子、何だか不機嫌だな。はあ、どうしようかな……)

 

その週末、ふたりは流行りのデートスポットに現れたが、どこか不満そうで、ふたりでいることを心から楽しめていないようだった。

 

女性の影

 

敦子は、不安で胸が張り裂けそうだし、怒りが爆発しそうなのを必死でこらえている。

 

浩一はたぶん、敦子のことを大切に思ってくれている。

 

でも、とにかく胸騒ぎがするのだ。

 

その理由の一つは、今まで敦子以外とは携帯メールをしなかった浩一が、誰かとメールしていること。

 

先日たまたま置いてある携帯にメールが着信した瞬間、女性の名前が表示されたのを見てしまったのだ。

 

その瞬間、敦子の心は沸騰するようにカアッとなった。

 

その場に浩一がいたら、罵倒していただろう。

 

(浩一に限って……どういうことこと?)

 

敦子は激しい怒りを覚えていた。裹切ったら許さない……。

 

「ねえ、浩二あなた、誰か別の女の人とメールしているんじやないの?」

 

 ある日、浩一と会った敦子は、こう問い詰めた。

 

敦子は意識していなかったが、その声はまるで、旦那の何年もの浮気を問い詰め、責める妻のように冷たく、殺気立っていた。

 

(うわ! 敦子、怒ってる。ヤバい。機嫌悪いよ。どうしよう……)

 

浩一は固まってしまった。

 

敦子のことは好きだけれど、実は最近別の女性が気になっている。

 

心の中で白黒ついていない気持ちを相手に説明するのは苦手なのだ。

 

「……」

 

浩一は沈黙することしかできなかった。

 

(何? 何も言わないわけ? そうやって逃げるなんて卑怯よ!)

 

敦子は口に出さないよう必死で我慢していたが、心の中では浩一を激しく罵倒していた。

 

「何か言ってよ」

 

敦子は、できるだけ穏やかに言ったつもりだったが、その言葉は氷のように冷たく響き、浩一の心に鋭く突き刺さった。

 

長い沈黙の時間が流れた。浩一は、何をどう説明したら敦子を怒らせずにすむか必死で考えてみたが、今の敦子には何を言っても怒られるような気がして、結局何も言えなかった。

 

「もう、今日はやめようか」

 

ついに敦子が言った。実際、このまま話をしても、埒が明かないのはあきらかだった。

 

別れて帰る途中、敦子はこんな言葉を頭の中で繰り返していた。

 

(浩一が悪いのよ。浮気なんて最低。もし裹切ったら許さない!)

 

その後、ふたりの関係はギクシャクしてしまった。

 

敦子が連絡をすれば、浩一は折り返し連絡してくれるが、向こうから連絡が来ることはほとんどなくなってしまった。

 

敦子が会おうと言えば会ってくれるけれど、以前のようにラブラブな感じはなくなってしまった。

 

会っていても、息が詰まるような感じがする。

 

言いたいことはたくさんあるけれど、もう一度浩一を責めたら、間違いなく逃げていくだろう……。

 

「依存タイプ」の解説

 

敦子は、「かわいそうな人」の仮面が外せなくなっています。

 

自分の欲求はいつでも相手が満たしてくれるという期待、幻想を抱いていて、相手がそれに応えてくれないと「私ってかわいそう」という顔をするのです。

 

そして、「何で会ってくれないの?」「何で連絡してくれないの?」などと、疑問形で詰問する傾向があります。

 

その言葉の裹には、「私の寂しさを埋めてくれて当然でしよ?」「私か不安にならないように連絡してくれて当然でしよ?」と、相手が自分の欲求を満たしてくれることを当然と見なす心が隠れています。

 

つまり、相手に「依存」しているのです。

 

本当は、抑え込んでいる寂しさや不安を自分で解消する自信がないことが問題なのですが、そのことに気づいていないか、うすうす気づいていても、自分ではどうしようもないので、相手に責任転嫁してごまかしています。

 

このタイプの人と交際した人は、期待に応えられないと責められるし、期待を上回ることをやり続けないと喜んでもらえないので、次第に疲れてしまいます。

 

そして、結局ケンカになって、関係が終わってしまうというパターンに陥りがちです。

 

仮面の呪いを解き、その下に抱え込んでいる感情をうまく解消すれば、感情の激しさが十分の一になります。

 

その具体的な方法は後述しますが、ここでは、意識的にがんばるのではなく、白動的にわいてくる強い感情を解消することができるとしたら、あなたの恋愛はどれだけ楽になるかを想像してみてほしいのです。

 

 

このタイプに自分が近いと思う方は「依存タイプはこんな人」に関するページをお読みください。